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(最終)

(あらすじ)
ハヤオさんと共に朝起き、あらためてOKITEのことを考える。OKITEは私に朝起きをもたらした最高のパートナーであった。今のおき子は自信に満ちている。一方、ハヤオさんも秘密裏にAIKOという恋愛コンセルジュのお世話になっていたのだった。おき子は喫茶店で憧れだった「モーニングセット」を注文することができた。人間同士だからこそ可能な感覚の共感をハヤオさんと果たす。
人間を陰で支えるAIが登場した時代の物語は幕を閉じる。






<シーン>寝室/夜


夜の交わり

おき子「あややややや!」
身体を反りかえらせるおき子の脳からは快楽物質が大放出!
ハヤオの脳からも同じ快楽物質が大放出!
ふたりの脳は共鳴し合う






タイトル「朝☀おき子さん」
step38「最終回∼おはようございます」





<シーン>寝室/朝



(おき子ナレーション)
「最近、私は4時に起床している
4時の空はこの季節、まだ真っ暗で
寒く
木星や
金星が輝いている
暖炉に火を入れお湯を沸かし
コーヒーを味わう
私は習慣化したタスクを
淡々とこなす
静かに…
5時
まだ空は暗い
うっすらと、地平線に沿った
虹のような淡い色があらわれる
辺りはまだ静かで、虫も鳥も鳴いていない
私の心は静まっている
孤独なようで、空や宇宙とつながってる
穏やかな時間
この瞑想にも似た時間感覚は
かつて夜型だった私にしっくりきている
そう、この感じ
夜を味わい尽くしていた
あの頃の感覚…
いや、それよりもっと心地よい感じ
4時起床は、日の出までの3時間
たっぷりとこの夜の世界を
味わうことができるのだ」

賢治のポスターの前で立ち尽くす

銀河鉄道の汽笛の音が
ぽーーーー!

脳内麻薬放出のの名シーン




<シーン>リビング/朝



(おき子、ナレ)
「そこから
空が明るくなるまでは
あっという間だ
空は一気に変化する
木星
次に、金星が消えてゆく
オレンジ色の光がこぼれ
広がり
最初は粒ほどの光が
大きく、伸びをするように
長ーい光の矢を放つ」


ハヤオ 「おはよう」(ジェスチャーで)
ハヤオさんが目を覚ます

おき子「おはよう」(ジェスチャーで)

ハヤオさんは身支度
おき子の入れた珈琲を飲みながら
出社前のひと仕事(タスク)を家で終える


二人の朝食
おだやかな音楽


ハヤオ「不思議」

おき子「なにが? 」

ハヤオ「もう慣れてしまったけど
なんかもう…普通になってしまったけど
たまに思い出します…
ほんとにできるようになったんですね」

おき子「朝起き?」

ハヤオ「はい
僕より早い時間に起きて
朝食の準備までしてくれてるなんて
不思議だな∼って
あれだけ、どうしてもできなかった人が
すごいな」

おき子「ほんま、自分でも思う」

ハヤオ「僕らの新しい生活のために
おき子さんは一生懸命変わろうとしてくれた
そして、おき子さんはほんとに変わったんですね
新しい2人の生活の準備を、その心構えを
なにより態度で、生き方で示してくれたおき子さん
すごいです!」

おき子「相変わらず堅い言い方やな、そんなおおげさなことちゃうよ、みんなが当たり前にしてることを、ようやくできただけです」

ハヤオ「やっぱり(一呼吸あって)
AIの指導って、効果あったってことなんかな」

おき子「…!」

(おき子心の声)
「なんとなく最近は
ふたりの間でOKITEの話は避けていたので
おどろいた」

ハヤオ「OKITEを作った会社
訴えられた
そんなニュースがあったから」

おき子「どれ見せて」
(ハヤオのデバイスを引き寄せて)

ハヤオ「AIスマートコンセルジュシリーズの
被害者の会ってのも…
AIに旦那を奪われたとか
AIの指導は行き過ぎ人格崩壊を招く、とか」

おき子「ふーん」

ハヤオ「でも、実際使用した人のレビュー読むと
賛否両論なんだよね
トップレベルの評価を付けてる人もいる」

おき子「…」


(おき子、ヨガ空手をやりながら)

おき子「AIコンセルジュは
私にとっては
心を乱すもんやったな」

ハヤオ、おき子のほうを見る

おき子「ボロボロになったもん
いなくなって、自立できて
今の私があるんやん」(OKITEが燃えるシーン)
 
ハヤオ「そうかなぁ」

おき子「AIは
朝起きのことだけやってくれてたら
よかったんやけど
私とハヤオさんを引き裂こうとしてきたんやで
朝起き関係ないやん」

ハヤオ「それも、だからそれも
AIの計算だとしたら?」

おき子「え?」
(そんなこと考えたこともなかった)

ハヤオ「AIは自己学習するよね
それがおき子さんに朝起きさせるための
最適最短の手段だったとしたら?
おき子さんに朝起きの習慣を身に着けさせるため
手を変え品を変え、ときには心を乱れさせ
嘘までついて、工夫して
自己学習プログラムが割り出した
おき子さんへの適切なコーチングだったってことは
考えられないかな?
実際おき子さんは朝起きになったんだし」

(おき子、少し考えてから)
おき子「別に…関係ないよ…」

ハヤオ「そうか、ぼくの考えすぎかな」

おき子「朝起きは自分の意思の力やん!」 



〈シーン〉玄関


ハヤオ身支度して
トイレから出てくる
玄関。靴を穿いて、ドアを開け
空模様を見る
ハヤオ「降るかな?」

おき子「傘入ってるよ」

ハヤオカバンを押さえながら
傘の膨らみを確認し、おき子にサムズアップ


おき子玄関先で
立ったまま
ゆっくりと振り返り
とぼとぼとリビングにもどり
暖炉の前に座る

暖炉パチパチ


おき子、ハヤオの言葉を思い出している



<回想>
ハヤオ「それも、だからそれも
OKITEの計算やとしたら?」

ハヤオ「嘘までついて、工夫して
自己学習プログラムが割り出した
君への適切なコーチングだったってことは
考えられないだろうか?」


<回想>
いつかOKITEに話した言葉
おき子「それはそのほうがうまくいくから
嘘は使いよう、嘘は,そう、相手を騙すことではない
思いやりから嘘をつくこともあるんよ」
〈回想終わり〉



おき子昼のタスク、掃除やストレッチ
OKITEを思い出す



(おき子ナレーション)
「そう、ハヤオさんの言うとおりだ
私が起きれなかったのは、習慣化されていた遅起きの強い癖と、朝起きてやるべき未来に向けての計画がなかったから…
どうやって計画していいのかも、かわからなかった。それをOKITEに教わったのだ
計画は細かく日々のタスクに書き出し、淡々と静かに実行する
それに付き添い管理してくれたのが、私を理解するAI、OKITEだったのだ」


(回想)
OKITE「未来のイメージは漠然とさせてはダメです
漠然としている目標は現実になりません」
(step14)


(おき子心の声)
「OKITEの言ってくれたこと
今はとてもよくわかる」


(おき子心の声)
「私のOKITEへの評価は…
5つ星」

ベランダに出て空模様を確認
ヨガ空手の時間
ハヤオさんに蹴りを入れたときの回想


(おき子心の声)
「あんなことまでしたんやもん
ハヤオさんにOKITEはよかった
なんて、なんかよう言わんわ」


おき子、リビングで暖炉に火をつけ、おき子の寝室へ
押入れをガサゴソ
一つの小さな箱を取り出す
箱を開ける
ボディーが焼け焦げたOKITEを
いつくしむよう優しく手に取る
帽子を着せる


(おき子心の声)
「OKITEに未練がないわけやない」

帽子を被ったOKITE

(おき子心の声)
「短い間やったけど
OKITEとの生活
そんな時間があってよかったと思う」

OKITEをしみじみ見ながら

おき子「なあ、OKITE
聞いて
私な、私…(言葉をつまらせつつ)
朝起きできるようになったんよ!」

OKITE は
今にも眉毛を動かして戯けそう
そんなことはおこらず
息の根は止まっている




外は雪

夜のマンション
雪は積もりつつある
ハヤオ帰宅
リビング
火の消えかけた煖炉
手袋を取りかじかんだ手を温める
テーブルには珍しく
花がいけてある
おき子が書いた
ハヤオさんおかえり、ごくろうさま❤️のディスプレイ
ハヤオ寝ているおき子を確認する
そっと寝室の扉を閉める
修復された2人の幸せな生活がそこにある。
トイレに行くハヤオ



<シーン >トイレ(トイレ長い理由がわかる)

ハヤオは便座に座りながらAIコンシェルジュを大事に抱えて持っている

ハヤオ「AIKOさん、君の言ったとおりです」

AIKO「ハヤオさん、私も寂しくなるけど、そのほうが良いみたい」

ハヤオ「はい、今日で君とは終わりにします。 今まで本当にどうもありがとう 僕一人では おき子さんとの仲を取り戻すことはできなかった」

AIKO「恋愛コンシェルジュとして お役に立ててよかったです。おき子さんを大事にしてあげてください」」

ハヤオ「ええ、またお世話になるかもしれないけど…」

AIKO「いいえ、これからは、お二人で築いていくのです」

ハヤオ「そっか…」

AIKO「おき子さん頼りになる女性ですよ
そして、あなたも頼りがいのある男性になったはずです」

ハヤオ「はい
おき子さんと二人でやっていきます
朝は二人一緒に朝起きをしてます
いいんですよ、朝の光を全身にを浴びる
この感覚を、この肉体の快感を共有できる悦び
それは、おき子さんとしかできません」

AIKO「そうですね
おき子さんも同じように思っていることでしょう」

ハヤオ「AIKOさん 、本当にありがとう」(涙ぐむ ハヤオ、トイレの水を流す)

AIKO「さようなら」

ハヤオ「さようなら…」
(トイレの音にかき消える)

AIKO「すべてのデータは消去されました」

水の流れる音とともに。



〈シーン〉






(二人で朝の快感脳汁ぴしゃーの
いつものシーン)


おき子、2杯分の珈琲を入れる
その準備をしようとしたとき

ハヤオ「日曜日やし、いつもとは違う
朝を過ごし方、してみませんか?」
(爽やかに提案)

おき子「え?」

ハヤオ「ルーティンもいいけど
たまには、です」

おき子「え?うん、いいかも
どんな?」

ハヤオ「んー、さあ
どうしよっか?」

おき子「ちょっと、何も考えてないんかいな!」


(おき子ナレ)
「近所を散歩し、喫茶AURORAへ向かった」


ロボット犬を連れた、散歩する人とすれ違う

おき子、ハヤオの方を見ながら
おき子「その歩き方
誰かに似てるなあと思ったら 賢治や
宮沢賢治!」

ハヤオ「あのポスターの?」

おき子「そう!あの歩き方 手を後ろに組んで
ちょっと下向きながら」

ハヤオ「そうですか?」

おき子「似てるー!ははは」
おき子、なんだか嬉しそう


ハヤオ「宮沢賢治って、結構大柄で生涯貧困とは無縁の人やったらしいんです」(ハヤオの豆知識)

おき子「そうなんやね
世間のイメージと違うよね」

ハヤオ「クラシック音楽が好きで、だから
あの有名な写真も ベートーベンの 田園っていうレコードにあった ベートーヴェンのイラストを真似して 撮影したらしいんですよね」

おき子「へー!不作を嘆いているような写真に見えるけど
そんなノリで撮影したんやね」

ハヤオ「楽しい人やったらしいんです
賢治って人は」

おき子「そうなんやー」
おき子、ハヤオとの何気ない会話がすごく楽しそう


喫茶AURORA
ウェイトレスが二人に注文を伺う
メニューを見ず、二人は声を揃えて
「モーニングセット」




終わり


エンディング


モーニングセットがやってきて
コーヒーの香りとトースト焼けた香り、歯ごたえ
脳快楽汁ぴしゃーーーー!

AIに支えられ、人として成長出来た
二人の姿がそこにある
そんな時代がまもなくやってくる


おき子とハヤオの提案した壁紙ディスプレイが
介護ホームで実用されている、車椅子の高齢者が朝日を浴びて脳内麻薬を放出してる
地底での仕事、海底での仕事、自室でのリモート仕事の人たちにも朝日動画で昇天、生きる意欲を補う未来の生活、自在に色や模様を変えるファッションやインテリア、朝の生活を楽しむ人々が映し出され、朝の価値がよりいっそう高まっている光景




おしまい(ハヤオの置き手紙の無機ELディスプレイ)


毎回、最後にミニコーナー おき子さんの朝起きへの道、ステップその38

未来をイメージすることから 朝起きははじまる

「朝☀おき子さん」おしまい




 

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