(独白)
(あらすじ)
OKITEもハヤオさんも失い
おき子の心は闇に包まれる
おき子、夜の公園に一人
凍えそうになってるところを
ハヤオが手を差し伸べる
互いの独白
<シーン>風見鶏がアホほど見えるケ丘公園/夜
おき子ひとり、時計台の下
高台の芝生に腰を下ろして
(おき子、ナレ)
「ひさびさ、わたしはひとりだった」
(おき子心の声)
「なんかこの感じ懐かしいな」
昔はこうやって
夜を満たしていた」
(おき子、ナレ)
「夜が入っていく
私の中に」
タイトル「朝☀おき子さん」
step33「ふたりはおわり」
〈シーン〉風見鶏がアホほど見えるケ丘公園/深夜
バックの中の壊れたOKITEを取り出す
OKITEはボロボロ
バネがビヨーーン!
眉毛焦げ
〈回想〉
OKITE 「おき子さん
解決策はあります
一緒に考えてゆきましょう」
〈回想終わり〉
今は何も言わぬOKITE
おき子「ねえ…、OKITE…
なんか言うてよ…」
おき子スマホで
OKITEの修理について調べる
スマホのページをめくりながら
おき子「保証期間中やから
なんとか復活できるかもしれん」
おき子「えっと…、利用者が製品を誤って落としたり水没したりと、使用者の過失がある時…
あかんわ…
もろ過失や…」
おき子ガックシ…
(おき子心の声)
「今は朝起きなどどうでも良い
OKITEの言葉がほしい
OKITEと話したい
私はこれからどうしていいのか
どう生きていいのか
誰かの言葉がほしい」
何も言わぬ壊れたOKITE
おき子、スマホのベージをめくりながら
おき子「就職がうまくいくAIコンセルジュ「TSUTOMU勤」
シミやニキビからお肌を守る美肌AIコンセルジュ「sknスキン」
受験AIコンセルジュ「ukaru」
筋トレAIコンセルジュ「MUKIMUKI」
おしとやかな女性になれる「honokaほのか」
お金が貯まる「CHKIN」
育児 「IKUKO」
なんや、いろんなシリーズあるな」
おき子「恋愛コンシェルジュAIKO
次、このタイプでもええな」
おき子「あかん…
また人生惑わされるだけや…」
外は寒い、冷たい風
薄着で飛び出してしまったおき子
凍える
おき子「寒…」
高台をフラフラしながら歩く
風見鶏がついた時計台
風見鶏は小さく左右に揺れている
夜の零時近い
おき子「いつもやったら
とっくに寝てる時間やな」
まぶたが半分
足元ふらつき
おき子、足元の側溝に気づかず落ちてしまう
なんとか這い上がる
ケガはなかったが、衣類は汚れてる
その場でヘタる
せつない音楽
自販機の明かりだけが
顔を薄く照らしてる
おき子うつらうつら
このままここで寝てしまったら
ヤバそう
おき子、眉崎さんのこと思い出す
おき子「さむしい…」
うつらうつら…
おき子、夢を見ている
眉崎さんと会う夢
おき子ちゃん
夜の世界へおーいでー
私は朝が苦手なのー!
太陽の光を浴びて
溶ける眉崎さん
ヨダカが死んでゆくように
うつらうつら…
あたり一面がが明るくなり
天使が空からゆっくりと舞い降りてくる
天使たちがおき子に
優しく毛布をかける画面に重なって
厚手の上着がおき子に被せられる
おき子の背後にはハヤオさん
ハヤオ「こんな薄着で
風邪をひきます」
おき子振り向く
顔面がボコボコに腫れ上がってるハヤオ
おき子「ハヤオさん…」
上着をぎゅと、腕をクロスして自分の方へ引き寄せる
<シーン>風見鶏がアホほど見えるケ丘公園/深夜、おき子の告白
ハヤオ「この自販機すごいんですよ
ぼくの顔を覚えてて
ぼくの好きなコーヒーの種類
原産地、焙煎具合、より好みの味に
進化してるんです
おき子さんも、これ好みだと思います」
コーヒー抽出のボタンが点灯しない
ハヤオ「あれ?
顔認識しない…(顔面ボコボコに腫れてるから)
しょうがないなあ」
自分でボタンを押して調合する
出来立ての湯気の立つコーヒーを
おき子にわたす
コーヒーを手にもつ
おき子「あったかい…」
コーヒーの湯気が
おき子の凍てついた手と顔を
ほころばせる
生気をとりもどし
おき子頬に赤みが戻ってくる
両手に抱え
大事そう飲む
コーヒーのあたたかさと
人のぬくもりがおき子の心と体に染み入る
ハヤオ、おき子の横に座り寄り添う
おき子「…ごめんなさい
ハヤオ「…」
ハヤオの腫れた頬に手を当てるおき子
自分のやってしまったことが目の当たりにし
心痛める
反省の気持ち
コーヒーで体が温まり
白い息が出る
(ハヤオさんに真実を告白)
おき子「最初は朝起きがしたかっただけやったん
朝起きのことを調べてたら
人工知能によるコーチング…
受けられるっていうのを見てしもて
それがはじまり、内緒で買って…
どうせこんなものと思って
そしたら…
いつのまにかこんなえらいことになってた」
ハヤオ「…」
おき子「AIのせいにするつもりやないんやけど
頼りにしてしまった…、心を持ってかれた
なんでも答えてくれるんやもん
ハヤオさんに知られたくない私のダメな部分も全部知って答えてくる…
ハヤオさんには相談できへんことも…
いや、…ハヤオさんに相談したらええことも
OKITEに相談してた
全部ぶち壊してしもた…
コレも(バックにはいったOKITE)自分も、ハヤオさんも…全部ぶち壊してしもた…」
頬の腫れがひどいハヤオを見ながら
おき子「怪我まで負わせて…
サイテイやね…」
ハヤオ「…ぶち壊れてないよ」
おき子、力なく微笑む
おき子「でも、結婚前に私という人間が
どんなダメ人間か
知ってもらって良かったかも…
ハヤオさんにとっては良かったよ
こんなヤツを嫁にしようとしてたんやから
それがわかったんやから…」
ハヤオ「違う…」
おき子「…!」
風が吹き、時計台の上の風見鶏が反転する
時刻は零時になりそう
ハヤオ「僕を(この頃からハヤオは自分のことを小生と言わなくなっている、その理由は後に判明する)頼ってもらえなかったのは、僕が頼りないからです、自分でもわかってるんです」
おき子ハヤオの方に目をやる
ハヤオ「だから、僕はいつも言いたいことがあっても、飲み込んでしまう、言わなきゃいけないことでも言葉が出てこない
でもそんなことではいけない
ときには、勇気を持って言わなきゃいけないこともある
だから言います」
おき子「…」
二人対面して
おき子「なに?」
ハヤオ「…」
おき子「ためんとって!」
ハヤオ勇気を振り絞り
おき子「早く!」
生ツバを飲んで
風見鶏が一回転する
時刻は零時
ハヤオ「こんな僕が言うことだから
話半分でかまいませんが
おき子さんは
2つ、大きな勘違いをしています」
おき子、まっすぐハヤオさんの方を向いて
ハヤオ「一つは
僕は技術者です
人の生活はあらゆる技術で支えられています
だから僕は人が人工知能に頼るのは
良くないことだなんで思ってません
それともう一つ、僕は
最初っから
言ってたじゃないですか」
おき子、なにを?って表情
ハヤオ「朝起きなんかしなくていいんです
今のおき子さんで
夜型のおき子さんでいいんです!
それでなんか困ることがあれば
僕を頼ってください
最初から言ってたはずです!」
おき子「ハヤオさん…」
ハヤオ「これからの、新しい僕たちの生活
乗り越えなければならないことが
きっと山ほどある
だからこれは、その、つまり
ふたりに用意された
試練なんじゃないでしょうか
今、試されてるんじゃないかな
これを乗り切ったら
未来が待ってい…
…いや、そんなきれい事を
言いたいんじゃない
えっと、…」
ハヤオ立ち上がって
おき子の方へ歩きだし
前に進みながら
ハヤオ「行かないでほしい
そしてもうそんなにがんばらないでほしい
おき子さん!ぼくがいるから…!」
と言い終わるか終わらないかで
側溝に落ちる
(音楽)
ハヤオ、なんとか這い上がる
おき子ナレーション
「こんなハヤオさんは見たことがなかった
彼は少し震えていた」
おき子、いままでとは全然キャラが違うハヤオにあっけにとられつつ
ハヤオの姿は勇ましく、なにか大きな吸引力で惹きつけられるのを感じる
おき子の心拍数は120を超えている!
おき子は静かに目をつむる
覗き込むハヤオ
ハヤオ「寝てるやん!」
おき子膝を抱えて
うなだれている
ハヤオ「そっか、いつもならおき子さん
とっくに寝てる時間ですね…」
ハヤオ、おき子を背中におぶる
背中で泣いてるおき子
つづく…
毎回、最後にミニコーナー
おき子さんの朝起きへの道、ステップその33
平成28年社会生活基本調査結果より
全国平均は 6:32
岩手県 6:17
思ったよりみんな早起き
「朝☀おき子さん」また来週!