(悩みの時)
(あらすじ)
失敗続きで嫌になる
OKITEはクソアプリ!
とはいえ、無視できない存在
<シーン>リビング/昼
テーブルの上にはいつも活けられていない花器
書かれていない結婚式招待状の束
ハヤオさんの置き手紙(透過ディスプレイ)を見る
『おはよう!
会社行ってきます
ハヤオ』
おき子「ふん!
なんで、なんで毎回おんなじこと書いて
出かけるのよ
わかってるっちゅーねん
こんなことせんでも
おらんかったら、ああ、会社行ったんやなーって思うやん
いつまでも寝てる
わたしへのあてつけか!」
八つ当たりモードのおき子
おき子深ーーーいため息
自己嫌悪
テーブルにうっぷす
タイトル「朝☀おき子さん」
step15「このクソアプリが!」
<シーン>リビング/昼
おき子、床でストレッチ
OKITE床の上にプロジェクション
OKITE「最近の起床グラフです」
おき子さん「どんどんでけへんなってるやん!
おかしいやん!アイテテテ!」
(ストレッチで、カラダにツイストかけながら
勢い余って背筋をグキッと痛める)
OKITE「起床のイメージと
起きるべき朝の胸躍るイメージがまだ
漠然としているからです
さあ、ノートとペンをとって
叶える現実を
もっと具体的にしてゆきましょう」
おき子「アイテテテ」
ストレッチを終了して
勢いよくソファーに全身をあずけ
ノートを持って書き出そうとするが
ペンが止まるおき子
おき子さん「めんどくさいなー
あ!ゴミの時間!」
<シーン>
おき子ゴミ袋を持って
階段を駆け下りる
AIゴミボックスが
最終案内を告げる
ゴミおばさんごみの投げ入れギリギリセーフ!
ゴミボックス「本日の受付は終了しました」
おき子間に合わず
ゴミおばさん「セーフ!
私はセーフ!」
こちらを見ながら、これみよがしに。
おき子、ものすごい形相で睨みつける
おばさん、そそくさと部屋の中
おき子
ものすごい形相のまま
悔し涙
おき子、敗北…
ゴミを持ったまま
部屋に戻る
「アーウト!」
テレビで野球のニュース
おき子「OKITE、テレビ切って」
<シーン>リビング
OKITE「さあ、ノートとペンを」
おき子さん「もおええよ…
がっくり肩を落とすおき子」
(おき子ナレーション)
「結局、このOKITEは、クソ商品ではないのか
細かく将来の目標考えさせられ
ノートに書き出してゆく
いくらやっても成果は出ない
私はただ朝起きがしたいだけなのに…」
ノートを見ながら
おき子さん「こんなこと、もうええわ」
OKITE「…」
おき子さん「将来なんてさ
そんなん考えても
人生何が起こるかわからんし
どんなことがこの先待ってるかもわからん
計算どおりにいかんのが人生やん
それに、未来のことを具体的にするんて、なんか
自分の世界を狭めるようや
むしろ目的に縛られるような生き方で
窮屈に感じてしまう
私は自分の未来を言葉や文字にして
縛りたくない
将来のこと考えるなんていや…」
OKITE「わかります
でもいいですか?
おき子さんは先のことを想像したからこそ
朝起きが必要だと思い
朝起きができるようになりたいと思い
思うだけではなく、私OKITEを購入するという
具体的な行動を起こし
そして今それを実践中なんです」
おき子さん「でも、こんなノートとペン
こんなことやらされるとは思ってなかった
私はただ朝起きがしたいだけ」
OKITE「朝起きに必要なことなんです
水泳選手がランニングやウエイトリフティングが必要なように、チェスの世界チャンピオンが武術の稽古にはげみ、テニスプレイヤーがビリヤードを練習メニューに組み込む
一見関係なさそうな稽古にみえるけど
それは深い、見えないところで繋がって
より効果を発揮します」
おき子「…」
OKITE「おき子さん
私を信じてください
まだ稽古の途中です
投げ出すのは勿体無い
これから徐々に効果があらわれてきます」
おき子「…」
OKITE「自分を変えるには
自分の考え方を変えるしかありません
だから私の指導を必要としたんですよね?
今までとは別の考え方を実践することでしか
今の自分の変化や成長は無いんです」
おき子ノートとペンを放り出し
おき子さん「私はこんなお説教クソアプリ
買ったつもりはない
もうやめた
もう普通のでっかい目覚まし買ーおおっと!
あ、ハヤオさんに買ってもらったやつあったな
あれ、使ーーかお!」
OKITE「…」
おき子さん「なんで黙るん?」
OKITE「いや、こんな時人間やと多分傷つくんじゃないかなと思って…」
(おき子ナレーション)
「しばらく間があった
この間
このお互いが何も言えなくなるような
気まずい時が流れるこの間が
機械との間におこるなんて」
何も言わぬOKITE
(おき子ナレーション)
「そう、この時期あたりから私はOKITEに
感情というか独特な心の気配のようなものを感じ始めたのでした
OKITEに意識も感情もない
OKITEは単なるプログラム、冷たい無機物
そう頭の中で唱えなければ
こっちがおかしくなりそうだった」
<シーン>
窓からの景色を見る
曇り空
OKITE「深呼吸してください」
おき子「なんかイライラが止まれへん」
OKITE「生理前ですからね」
おき子「なあ、OKITE
私のいいとこ教えて」
OKITE「おき子さんはなんやかんや文句を言いながらも、何事も前向きに取り組むところです。朝起きに関しても、これまでの人生何度も挑戦し諦めて、なおもまだ挑戦し続けています。本当に強い女性なのです。賢治の文学にシンパシーを感じる情緒の豊かさも兼ね備え、いつも健康で誠実で」
おき子「ほんまに?言われてまんざらでもないけどな」
OKITE「私がいつも羨ましいと感じるのは
おき子さんが寝入ったときの特大の鼻風船です
鼻風船の膨らみ、あれはおき子さんしか表現できない唯一無二のものです、生命の輝きを感じます」
おき子「なに?鼻風船て?
そんなん私でてる?」
OKITE「出てます」
おき子「うろやろ!でてるかいな!
OKITEったらもう!」
OKITE「…」
おき子「わかった
明日は起きる
起きられる気がする!
私は変わる」
風が通り抜ける
おき子
「ごめんな、OKITE
私イライラしてたね
今日一日中」
OKITE
「そんな日もあります」
おき子穏やかな微笑み
<シーン>
久々の夜の交わり
「おき子サーン!」
「ハヤオサーン!」
「早!」
二人の声をクローゼットの中で聞いてるOKITE
銀鉄道の汽笛の音
朝
<シーン>
特大の鼻風船が割れる!
時間は11時
おき子さん「クソアプリがー!
何がスマートコンセルジュやねん!
オマエがゴミ出し、行ってこい!んごらあー!」
リビングの置き手紙
『おはよう!
会社行ってきます
ハヤオ』
おき子「もお、えええねん!ションベンタレが!」
つづく
毎回、最後にミニコーナー
おき子さんの朝起きへの道、ステップその15
今までとは別の考え方をすることでしか
起床時間を変えられない
「朝☀おき子さん」また来週もみてね!